おすすめ本 -書評-

  • 13.02.04
    さまよう薔薇のように
    矢作俊彦

  • 久しぶりに来ましたよ、奥さん!
    数年に一度、「これだっ!」と手に汗にぎって
    両足を踏み鳴らして鼻の穴をふくらませて「すきっっっ!」と叫けんでしまう。
    ええ、叫ばずにいられますかっていうの!
    もう好き!大好き!さいこう!まじでかっこいい!好きだぁー!
    今から日の沈む日本海に向かって叫びたいくらいです。
    それがこちら、『さまよう薔薇のように』です。


    主人公は探偵、のような男。
    「やだ、そんなの使い古したストーリーじゃない」
    なんて言っちゃったそこのキミ!
    罰として今日の夕飯はお味噌汁だけだからね!(しかも具なし)
    たしかにアマゾンなんかであらすじなんかを見ると、「あー古き良き時代のハードボイルドって感じ?」と
    思わず鼻をほじりながらせんべいでもかじってやろうかと思ってしまいます。
    が。
    これは何一つ古臭くないのですよっ!
    男くさい説教じみたセンチメンタリズムとは無縁、
    日本人のお涙ちょうだい的な湿っぽさも皆無、
    からっとした文章とリズムのいいストーリー、
    たっぷりとしてそのくせさらりとしたユーモアと、
    思わず背筋がぶるるんっと震えるくらいかっこいいセリフ。
    「バターと砂糖をまぜた酒が、下種じゃないって言うのかね」


    うぎゃああー!日本にこんなカッコええ小説があったのかああ!
    もうこれまでのあたしは目が見えてなかったのかしら?
    と思わず反省してしまうくらい、読んでなかったことを猛烈に後悔したのです。
    ほんと、まじでカッコいいから。


    とは言ったものの、やはり年代を感じさせる部分も多々ございまして、
    わたしのような大昔に成人式を終えた者にはそれが逆にスパイス的な楽しみになるのですが、
    今青春まっさかりの子が読んだらどう感じるのでしょうね。
    しかし、あーどうしてもっと早く出会わなかったんだろう!!!!
    そしたら薔薇を贈ってもいいと思われるような女になるべく、
    せっせと自分を磨きましたのに。今からじゃ遅いかな???


    てういうか、これが絶版って本気?
    こんなかっこいい本が売れない国って、頭おかしいんじゃない?
    尻に蒙古斑のついたアイドルにうつつをぬかす時代には、
    このカッコよさは理解してもらえないのかしら…もったいないぞお!



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