おすすめ本 -書評-

  • 17.01.28
    モッキンバードの娘たち
    ショーン・ステュワート

  •  
    この小説はたくさんの要素がからみあっています。
    母と娘の物語であり、幻想的な『乗り手』の話でもあり、
    家族、そしてヒューストンのうだるような夏の話でもあり、
    そしてチキン・モーレの香りも無視できない、
    どの視点から見ても芳醇で心をひきつけられる、
    最高に美しくて味わい深いお話です。
     
    主人公は30歳の娘、トニ。
    保険数理士という確率を扱うお固い職業で、性格はもちろん頑固。
    そんなトニの母親の葬儀から物語は始まります。
    トニの母親はただの母親ではありません。
    普通の人では信じられないような不思議な力を持っていました。
    それじゃなくてもトニとは正反対の性格で、
    死後も穏やかにはいきません…というスタートで
    小説は進んでいきます。
     
    体感小説。この本を読んで、私はそう感じました。
    本来、小説というのはもちろん読むだけのものなので
    体験というところから少し離れたところにあるものですが、
    この小説に限っては、読んでいる間に様々なことを体験します。
    夏の暑さ、料理の香り、不思議な『乗り手』の匂い。
    小説なのに、現実それ以上に皮膚を通して感じるのです。
     
    これまで読書を趣味にしてきた方が読んだなら、
    この小説の美しいごった煮感に心の底からしびれ、
    小説ならではの、不思議な感覚にやみつきになるでしょう。
     
    ぜひページを開いて、モッキンバードの娘たちに
    会いにいって見てください。
    素敵な体験ができること請け合いです。



    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
    にほんブログ村
PAGE TOP