もじりすた
3度のめしより本が好き
読み散らかした中から、おすすめ本を紹介します。
この小説はたくさんの要素がからみあっています。
母と娘の物語であり、幻想的な『乗り手』の話でもあり、
家族、そしてヒューストンのうだるような夏の話でもあり、
そしてチキン・モーレの香りも無視できない、
どの視点から見ても芳醇で心をひきつけられる、
最高に美しくて味わい深いお話です。
主人公は30歳の娘、トニ。
保険数理士という確率を扱うお固い職業で、性格はもちろん頑固。
そんなトニの母親の葬儀から物語は始まります。
トニの母親はただの母親ではありません。
普通の人では信じられないような不思議な力を持っていました。
それじゃなくてもトニとは正反対の性格で、
死後も穏やかにはいきません…というスタートで
小説は進んでいきます。
体感小説。この本を読んで、私はそう感じました。
本来、小説というのはもちろん読むだけのものなので
体験というところから少し離れたところにあるものですが、
この小説に限っては、読んでいる間に様々なことを体験します。
夏の暑さ、料理の香り、不思議な『乗り手』の匂い。
小説なのに、現実それ以上に皮膚を通して感じるのです。
これまで読書を趣味にしてきた方が読んだなら、
この小説の美しいごった煮感に心の底からしびれ、
小説ならではの、不思議な感覚にやみつきになるでしょう。
ぜひページを開いて、モッキンバードの娘たちに
会いにいって見てください。
素敵な体験ができること請け合いです。