おすすめ本 -書評-

  • 10.10.18
    アビシニアン
    古川日出男



  • 「十億年が過ぎて、私は東横線に乗り込んだ」


    これは小説『アビシニアン』の最初の一文なのですが、
    この一言でワタシは完全にノックアウトされました。
    かっこいい…鼻血でちゃう…ぶるぶるしちゃうよもう!
    というわけで今日は、最高にかっこいい、
    クールな文体と言えばこの人の右に出るひとは
    今のところいないでしょう、古川日出男氏の紹介です。
    (なんだかテレビ通販みたいだ)




    この古川日出男という人は本当にかっこいい言葉を書きます。
    ページに書かれた全ての言葉が必要で均衡がとれていて
    なおかつしなやかで美しい。
    まるで猫のような文体、と言ってもいいかもしれません。
    そのくせ芯が強くてパンチが効いています。
    そして特徴的なのが、「現在形」で書くことが多いことだと思います。
    実はこの「現在形」で書くこと、わたしは本当に好きではない
    書き方の一つなのですが、
    (嫌いといってもいいくらいです。ヘタクソがやると本当に二目と見られない文章になるのですよ)
    この人だけは例外的に大好きなのです。
    むしろそれで心がふるえちゃう、ってな感じなのです。
    たぶん考えて考えて考え抜いた言葉の精鋭達しか
    紙面に出ていないせいでしょう。
    冒頭の一文もそうですが、途中で何度もわたしは
    KOさせられました。読んでて頭がくらくらしました。
    頭をわしづかみにされて、ぐるんぐるんに振り回される、
    そんな感じです。あー幸せ。
    ちなみに話はネコの話というよりも、
    十代の二人の少年少女のお話です。
    そんな『アビシニアン』、最後は鳥肌が立ちました。
    「この言葉をここで使うのか…くう、やられたぜ!」


    そんなかっちょええ古川氏、
    さらにもっとかっちょええ小説を書いています。
    『ベルカ、吠えないのか』


    カッコよすぎてよだれがでます


    今度は犬です。
    というかこれ、前にも記事にしたことがあったような?
    まあいいです。だって好きなんだもん、ということで。
    これは犬の話です。犬好きにはたまらない一品です。
    といってもよくあるおバカな犬のハートフルストーリーなんか
    では決してなくて、犬が時代を駆け抜ける話です。
    ああもう、こうやって説明してる自分の文章力のなさが
    本当にいやになるくらいに最高にかっこいい本です。


    しかしどれだけかっこよい言葉をつむぎ出せば
    気が済むのでしょうかね。
    小説もいいのですが、一度古川氏に詩を書いてほしいと
    ひそかに願っちゃったりしています。
    それこそ核爆弾並みの破壊力を持った詩が
    できるんじゃないでしょうか。
    よ、読みたいぞ…。



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