おすすめ本 -書評-

  • 10.12.04
    グロテスク
    桐野夏生



  • ナイスタイトル!
    まさにタイトルから黒い汁が出ているようで、
    本を持つ手にも力が入るというものです。
    そんな今回ご紹介する本は、『グロテスク』桐野夏生。
    (やっぱりなんだかテレビショッピングみたいだなあ)




    あらすじはかんたん。
    東電OL殺人事件をモチーフとした、女の子たちの物語。
    絶世の美少女で娼婦の少女、その醜い妹、その友人を中心として、
    回想録、都心の高校を舞台に話が進みます。
    いじめ、美醜、成績、努力ではどうしようもない『なにか』が
    この話のテーマではないかと思います。
    ま、テーマなんでどうでもいいですね。
    目に見えないドロドロとした黒いもの、
    それをはっきりと文章のすき間から見せてくれる話です。


    努力すればむくわれる。
    よく言われる言葉です。
    しかし多くのことが、努力ではどうにもならない面があり、
    それをこの本でいやというほど見せつけられました。
    特に『女であること』というワクから出られないということを、
    桐野氏の本を読むたびに、いつもいつも強くつきつけられるのです。


    いい本なのか?と聞かれたら
    「女だったら一度絶対に読むべきだ」とわたしは答えます。
    ちなみに男には読む必要がないかもしれませんね。
    だって本当の意味で、女である『わたしたち』の考えや『なにか』を
    分かることはできませんからね。
    それでも読みたい、という度胸のある殿方にはもちろんおすすめです。
    でもその本の向こう側にある、真っ黒な女の園に怖気づかないでくださいね…。




    そんな桐野氏、わたしは大好きであります。
    女であること、それを一番強く意識した本は
    他にはない凄みがあります。
    ヘタな恐怖小説読むくらいなら、
    桐野氏の本を読む方がよっぽど怖いです。
    いつもわたしは読む前に一度、「ふんっ」と
    深呼吸して腹に力を入れてから読み始めます。
    じゃないと本に負けて、読み終えた時にはぼろぼろに…。


    さらにもっともっと、女のグロテスクに特化した小説がこちら。
    『I’m sorry, mama』

    I’m sorry,mama.



    暗い冬の夜に読む時にはご注意を。
    足の先から毛の先まで冷えることうけあいです。
    桐野氏、サイコー!





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