おすすめ本 -書評-

  • 10.08.03
    生きてるだけで、愛
    本谷有希子

  • きたきたきたー!
    このところアタリ本不足で、小説を読むのをやめて
    実用書や新書に走っていたわたくしですが、
    ひさしぶりに心の琴線を津軽三味線のようにかきならされる本に出会いました。
    それはこちら。
    『生きてるだけで、愛』 本谷有希子。




    実は本谷有希子はずっと前から気になっていたのです。
    歳が自分ととても近い、おんなじ性別、そしてなによりも本のタイトルのステキさったら!
    三島賞の候補にもなった『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』を見た時は、
    その言葉の衝撃でおもわず歩いている足が止まったくらいです。
    「な、なんてタイトルなのかしらっ。
     腑抜けどもですって!?ああ、ステキな言葉っ!』


    が。
    そこまで気になっていてもなかなか近付けないのが乙女心。
    ファーストインプレッションでおもいっきり期待してしまった分、
    実際に読んで裏切られるのが怖くて今日までずっと見て見ぬフリをしていたのですよ。
    好きな先輩と話したいけど嫌われるのが怖くて見てるのが精一杯って感じですかね。
    でも本日、わたくしは勇気をもって一線を越えました!
    そして読んでよかった!期待通り、よかったよーん(感涙)!


    なにがよかったのかといいますと、
    主人公は鬱でエキセントリックでそのくせ過眠症で無職という
    ちょっとまちがうと暗くて救いがない話なんですが、
    これは読み終えた感じがとてもイイ!のです。
    いつも思うのですが、純文学はエンタメ本とちがってオチがなく、
    悩み多き主人公は救われることもむくわれることもないまま
    今日と同じ明日を迎えて話がぷつんと終わるのですが、
    これはうまくその辺りを消化していると思えたのです。
    だから読み終えても胃が重たくならないのです。
    メインはカルビ焼肉だけどきちんと最後にレモンシャーベットが出てくる、
    そんな感じの本なのです。


    まあ、そもそも焼肉が食いたいのにお口さっぱりを期待するな、っていう話ですが、
    重たいだけの話なんてキャンプファイヤーできるくらい図書館の本棚に並んでますからね。
    重たいものをどうやって口当たりよくするか。
    そして次への期待につなげていくか。
    それが作家の力量でもあると思うのです。


    なーんてエラそうなことを書いて汗顔の至りですが、
    ようするに本谷有希子氏の本はとてもすてきだ、ということなのです。
    そしてまだ読んでいない本谷氏の本がたくさんあることに、
    思わず一人でオクラホマミキサーを踊りたくなるくらい
    幸せな気持ちでいっぱいなのです。



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