おすすめ本 -書評-

  • 14.12.14
    その女アレックス
    ピエール・ルメートル

  • これはすごい!
    完全にイッキ読みでした。
     
    お風呂の中でも読み続け、歯磨きしながらも読み続け、
    安らかに眠る猫をひざに抱えながら、
    深夜3時までイッキ読みです。
    もう先が気になって本が置けなかったのです。
    そんな本書、読者の予想を裏切るのも1回じゃない。
    私は大きく4回も裏切られました。
    それもジャブではなく、右ストレートでノックアウトが4回です。
    なんていい本なんだ…。
    読み終わったあと、しばらくにやにやが止まりませんでした。
     
    まず冒頭。
    タイトルにもなっている、アレックスが誘拐されます。
    そしてそれを追う、刑事とアレックスの2つの視点で
    話がぐんぐん進んで行きます。
    そう、ぐんぐん進むのです。
    読んでいて息をするのを忘れるくらい、ぐんぐん進んで
    どんどん予想を裏切って行きます。
    そろそろ安心できるかな?と思ってページをめくった次には
    どうしてそうなるのー!という展開です。
    本当におもしろいくらいに予想通りになりません。
    かと言って、読者に無理強いさせるような展開は一度もありません。
    全てが自然で必然です。読者を迷子にさせません。
    ですので読み手は優秀なガイドがいる川下りのラフティングさながらに、
    安全かつスリルたっぷりに激流を下って行けるのです。
     
    さらにさらに!
    登場人物がこれまた味わい深い構成です。
    美しいアレックスはもちろん、警察もすてきなキャラクターで
    まとめられています。
    主人公のカミーユが色々とトラウマを持っているのはまあ置いておいて、
    刑事にあるまじき富豪出身でなおかつかっこいいルイ、
    そして同じく刑事のアルマンはもらった煙草を吸った後、
    それを捨てずにバラしてさらに紙巻きタバコをつくるケチ。
    もうこれだけでお腹いっぱいになりそうなのに、
    さらに作者の描写の細かいこと!
    そしてそれがとても心地いいことったら!
    描写を削ることで読者に興味をもたせるスタイルがあるとしたら、
    作者のルメートル氏はその真逆でした。
    繊細なタッチで余白を埋めて、あますことなく世界を
    読者に伝えてくるタイプです。
     
    あーいい本だなー。
    今思い返してもわくわくがよみがえってきます。
    とはいえ思ったよりも衝撃的なシーンが多いので、
    血や死体が苦手な人には向いていないかもしれません。
    それでもこれは本当におすすめ本です。
    読者をだますぞ、だますぞ!というミステリは数多いですが、
    こんなに素知らぬ顔をしたストーリーにだまされるのは、
    なかなか出来る体験ではないと思います。
     
    読む前の自分に戻って、もう一度だまされたいくらいです。



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