もじりすた
3度のめしより本が好き
読み散らかした中から、おすすめ本を紹介します。
人は人を独り占めすることなんてできないよ。(『らも』より)
小説家、エッセイスト、脚本家として有名な
中島らもさんの奥様、ミーさんの回想録です。
らもファンならご存知、らもさんの愛妻ミーさんが書いた本と
あっては読まずにいられません。
とはいえ、読む前には少し不安もありました。
なにしろ私、らもさんの本はほとんど読破しているファン。
それほど「らも氏の書く本」がとてもとても好きな故に、
「らもさんじゃない人が書いた本」を好意的に受け止められるか、
少々不安だったのです。
でも、読んでみてそれが杞憂だとすぐにわかりました。
らもさんはミーさんが好きで、ミーさんもらもさんが好き。
もうこれ以上に言葉がありません。
もちろん、らもさんのエッセイを読んでいる人には、
「ああ、これがあの時の裏話だな」と分かるので、
そういったネタバレ的な意味でも楽しめます。
でも、むしろこの本は「中島らもを支えた奥さんの器のデカさ」が
これでもかと行間からにじみでているので、
らもさん云々というよりも、『一人のすごい女性』という意味で、
読み進めるほどに頭が下がるほど。
特に冒頭に挙げた一言。
『人は人を独り占めすることなんてできないよ』
これ、並大抵の人にはなかなか言えることではないと思うのです。
自分という自由な生き物、そして心の底から愛する相手、
その二つを理解して暖かいまなざしで相手を見、
なおかつ傷つくことを恐れず、時には我慢する心を持ってはじめて、
このセリフが言えるのではないでしょうか。
こんな奥さんだったから、らもさんは大好きだったんだな。
心にしみる一冊でした。