おすすめ本 -書評-

  • 14.11.21
    ブラッド・ブラザー
    ジャック・カーリイ

  • 初めて読んだ、ジャック・カーリイの本。
    この「ブラッド・ブラザー」がシリーズ第四作目だそうです。
    まるでクラッカーみたいに、ぽりぽり読み進めてしまうミステリです。
     
    とはいえ、一応猟奇殺人がとっかかりになる話なのですが、
    そこが主題では全然ありません。
    犯人はどうして凄惨な犯行に及んだのか、
    その生い立ち、現在の人間性は、なんていうところには
    あまり時間をかけずにさらっと進みます。
    それよりも誰が犯人なのか。そこが問題です。
    そう、たぶん「本格」とジャンルされるミステリなんでしょうね。
      
    ちなみにカーリイの第二作目、ブラッド・ブラザーの前前作、
    「デス・コレクターズ」では、2000年から2009年の十年に翻訳された
    最も優れた海外の本格ミステリということで、
    本格ミステリ作家クラブより最優秀作を受賞しています。
     
    ですからどちらかというと人や事件を掘り下げるのではなく、
    プロット重視、で書いているような気がします。
    ですので、文体やキャラクターの味わいは
    ワインでいうなら、ヌーヴォー。新鮮さと軽やかさが特徴です。
    まちがってもトマス・ハリスみたいな重厚さで
    織り上げられた作品とはひと味ちがいます。
    ですからむしろ、犯罪の微に入り細に入りという描写が
    苦手な方にはぴったりのミステリだと思います。
     
    そんな本書、主人公がさらに軽やかさを後押しします。
    一人称の刑事、「僕」。
    生い立ちではいろいろと大変なことがあったのにも関わらず、
    どこかひょうひょうとしてユーモアを忘れない。
    私は昔なつかしいアメリカドラマ「ER」のカーター氏を思い出しました。
    すっごいぴったりだと思うんですよ。まさにあんな感じなんです。
    だから苦み走ったハードボイルドが好きじゃない人でも、
    きっとこの「僕」と一緒なら、
    軽やかにミステリの世界に入り込めるような気がします。
     
    だまされないぞと思ってだまされる、
    そしてもうだまされないぞと思って、最後にやっぱりだまされる。
    くーっ、そうきたか!
    読了後ににやにやとトリック思い返してしまう、
    そんなミステリの醍醐味を存分に味わえました。
     
    さあ、「デス・コレクターズ」を買いに行こうっと。



    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
    にほんブログ村
PAGE TOP