おすすめ本 -書評-

  • 14.12.03
    心理検死官 ジョー・ベケット
    メグ・ガーディナー

  • やるなおぬし。
    そんな手だれ作家の本でした。
     
    主人公は心理検死官のジョー。
    ジョーといってもジョアナという名前の女性です。
    精神科医ですが、警察に乞われて事故の分析を始めます。
    これは事故?連続殺人?犯人は誰なのか、そしてその目的は?
    そんな王道まっしぐらのミステリです。
     
    この作者メグ・ガーディナー、とても手だれの書き手です。
    導入部で読者の興味を引き、さらに少し混乱させ、
    本線に乗らせたあとで少しずつ仕掛けを見せて行く。
    ミステリでは珍しくもないプロットですが、
    その分、稚拙な書き手が挑戦するとミスが目立つもの。
    料理で言うと、スポンジケーキを作るようなものでしょうか。
    誰でもつくれるケーキの土台ですが、
    上手な人とへたっぴでは、雲泥の差がでるというものです。
     
    そしてこの本は、そのプロの腕が発揮されています。
    犯人との駆け引き、主人公の人間的なエピソード、過去、
    それらがうまいぐあいでブレンドされて、
    読んでいて飽きる部分はどこにもありません。
    ふわふわしっかりのスポンジケーキの完成です。
    訳者の山田久美子氏もとても素敵です。
    おちついた、簡潔でミステリにぴったりの文体を当てはめてくれていて、
    スポンジにしっかりとはりついた生クリームのよう。
    これはミステリの玉手箱や!
    と、料理レポーター並みに叫びたいくらい上手です。
     
    ですが。
    そう、「上手な本」と「すごい本」ってまた違うんですね。
    これを読んで気がつきました。
    主人公のキャラクターもすごく魅力的で、文章も言うことなし。
    でも、どっかでなんだか読んだ事ある?
    そんな感想が否めません。
    面白いのに、なんかもったいない。
    たぶん、優等生なミステリなんだと思います。
    ミステリは、どこか破天荒な方がぐっとくるのかもしれません。
    でも、本当にいい本でしたよ。
    4時間近く、ぶっ続けで読みましたから。
     
    しかし本って、難しいですね。
    でもだから、やめられないんですけどね。



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