もじりすた
3度のめしより本が好き
読み散らかした中から、おすすめ本を紹介します。
やるなおぬし。
そんな手だれ作家の本でした。
主人公は心理検死官のジョー。
ジョーといってもジョアナという名前の女性です。
精神科医ですが、警察に乞われて事故の分析を始めます。
これは事故?連続殺人?犯人は誰なのか、そしてその目的は?
そんな王道まっしぐらのミステリです。
この作者メグ・ガーディナー、とても手だれの書き手です。
導入部で読者の興味を引き、さらに少し混乱させ、
本線に乗らせたあとで少しずつ仕掛けを見せて行く。
ミステリでは珍しくもないプロットですが、
その分、稚拙な書き手が挑戦するとミスが目立つもの。
料理で言うと、スポンジケーキを作るようなものでしょうか。
誰でもつくれるケーキの土台ですが、
上手な人とへたっぴでは、雲泥の差がでるというものです。
そしてこの本は、そのプロの腕が発揮されています。
犯人との駆け引き、主人公の人間的なエピソード、過去、
それらがうまいぐあいでブレンドされて、
読んでいて飽きる部分はどこにもありません。
ふわふわしっかりのスポンジケーキの完成です。
訳者の山田久美子氏もとても素敵です。
おちついた、簡潔でミステリにぴったりの文体を当てはめてくれていて、
スポンジにしっかりとはりついた生クリームのよう。
これはミステリの玉手箱や!
と、料理レポーター並みに叫びたいくらい上手です。
ですが。
そう、「上手な本」と「すごい本」ってまた違うんですね。
これを読んで気がつきました。
主人公のキャラクターもすごく魅力的で、文章も言うことなし。
でも、どっかでなんだか読んだ事ある?
そんな感想が否めません。
面白いのに、なんかもったいない。
たぶん、優等生なミステリなんだと思います。
ミステリは、どこか破天荒な方がぐっとくるのかもしれません。
でも、本当にいい本でしたよ。
4時間近く、ぶっ続けで読みましたから。
しかし本って、難しいですね。
でもだから、やめられないんですけどね。