おすすめ本 -書評-

  • 14.12.22
    星を継ぐもの
    ジェイムズ・P・ホーガン

  • ハードSFと分類される本書。
    しかし私はSFがあまり得意ではないので、きちんと読み切れるかな?と
    不安な気持ちで読み始めたのですが、はっきりいって無問題。
    池 央耿氏の流麗な日本語が相まって、
    結末が早く知りたいけど読み終えるのが名残惜しいという、
    本当に素敵な読書時間を過ごしました。
     
    あらすじはとてもシンプル。
    月面で古い死体が発見されます。
    それは調査の結果、なんと5万年前のもので、
    さらに人間と同じ骨格・器官を有していたのです。
    これは一体どういういことなのか?
    こんな壮大な謎を、まるでノンフィクションのように
    調査し、論議し、矛盾点を乗り越えながら、
    最後にあっと驚く結果へとたどり着くのです。
     
    これ、いい本ですよ、本当に。
    まずタイトルが素敵すぎます。
    原題は「Inherit the stars」だそうですが、
    これを「星を継ぐもの」とした池氏に拍手です。
    くーっ、かっこいい!
    この「継ぐもの」という言葉、普通は出てこないと思うのです。
    しかもただカッコいいだけではなく、
    この意味が最後に「そういうことかー!」と分かるのですが、
    もうその瞬間は鳥肌ものです。
     
    そしてこの本のさらにいいところは、
    本当に謎解きに特化しているという所です。
    確かに途中で主人公の博士が組織内で悩んだりは
    するのですが(これはこれでとてもリアルな描写で好きです)、
    論じているのは冒頭の謎についてが全てです。
    色っぽいお姉ちゃんとのラブシーンも、
    博士を悩ませるトラウマや殺人コンピューターも出て来ません。
    理論に次ぐ理論。明らかになっている証拠をもとに、
    矛盾点を明らかにし、それを理論的に解き明かす事でストーリーが進んで行きます。
    そしてそれでも読者を飽きさせません。
    池氏の美しくも凛々しい文章が最適な湿度で語るので、
    飽きるという言葉知らずで話が進みます。
    そして本当に、池氏の文章が最高に宇宙と合うんですよ…。
     
    さらに、小説としての技もしっかりと効いています。
    最後の部分。本当に私は鳥肌が立ちました。
    本読みの虫として、こういう瞬間が最高の幸せですね。
    スケールがとてつもなく大きい話なのに、
    きちんと最後に小説としてもきれいにまとめてくる手腕。さすがです。
    だからこそ、35年も読み継がれているのでしょう。
    (手元の創元SF文庫では、1980年初版、2014年94版!すごい!)
     
    しかしよくこんなでっかい事考えられたな…。
    本当に、心底感嘆したくらいのでっかい話です。
    しかもでっかいだけでなく、出来の良さも最高です。
    私は読了後、思わずミッシングリンクについて謎が解けたような
    気になってしまいました。
    そうか、こういうことだったのか…。
     



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