おすすめ本 -書評-

  • 15.03.12
    気になる部分
    岸本佐知子

  • これはまたいい本見つけてしまった…!
    著者は翻訳家なのですが、不勉強な私、
    著者の本を全く知らずに読んだのですが全然問題なし。
    一応これは翻訳家のエッセイと銘打っている本なのですが、
    岸本氏の愉快なキャラクター全開で、
    そこらのエッセイをぶっちぎりで追い抜き、
    完全に針が振り切れている最高の本でした。
       
    なにしろ面白いのです。
    なにが面白いって、著者の人がものすごい変なんですよ。
    (すみません、ほめています)
    夜中に明かりがついていた気になる窓の家を探しに行ったり、
    新幹線の「鼻」が気になったり、
    サルマタケという単語一つに悶々と悩んだり。
    これを例えば「あたしって変だから〜」という雰囲気で書かれたら
    読んでる人も鼻白むというもんですが、岸本さんはちがう。
    大真面目で本気。
    そして畳み掛けるように微に入り細に入り、
    描写をする文章技術が本当に見事で、
    こちらが眉をひそめる前にもう肩が震え、
    のどがひくひく動いてしまうのです。
     
    中でも『「国際きのこ会館」の思ひ出』というエッセイは秀逸でした。
    序盤、きのこ会館の不穏な雰囲気で始まったと思ったら、
    オチに次ぐオチ、そして最後はほっと一息ついたと思ったら
    最後にどどんと大きなオチへ。すごい、面白すぎる。落語家なのか。
    私は食べていたご飯を鼻から吹きそうでした。
     
    そして最後に読み終えてふと、
    「もしかしたらこのエッセイ、全部嘘かも…」と
    考えてしまった時の背中の薄ら寒さ。
    あー、最高です。現実と夢のはざまを行き来するような不思議な予感。
    それを感じさせつつ、腹をかかえて笑わせてもくれる。
    表面だけじゃない、なにかを感じる面白さです。
      
    岸本佐知子氏、これで我が家の本棚へ並ぶ事が決定です。
    さあ、もうお読みの方は一緒に肩を震わせましょう。
    スポアー!



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