おすすめ本 -書評-

  • 15.04.08
    香水
    パトリック・ジュースキント

  • 悪臭ふんぷんたるパリの街中で生きる、
    ある一人の天才、いや悪魔のような男のお話です。
     
    主人公はジャン=バティスト・グルヌイユ。
    これといった自我も主張もない男ですが、ある1点だけが人と違う。
    それは嗅覚。グルヌイユは匂いにしか興味がありません。
    何を差し置いても、匂いが全て。
    食べる事にも生きる事にも興味がありません。
     
    そんな小説の舞台は18世紀パリ。
    たくさんの人がひしめき、悪臭がたちこめ、食べ物が匂い、死体が臭う。
    まさに香水文化発祥の地で、
    グルヌイユも自然と香水に引き寄せられて行きます。
    しかしグルヌイユが感心があるのは普通の香水ではありません。
    それはある特別な人の匂い。
    その人の匂いを一滴残らず写し取るにはどうすればいいのか、
    匂いの常人ではないグルヌイユも悩みます。
     
    まさにこの小説は、匂い、匂いのオンパレードです。
    人の匂い、街の匂い、食べ物の匂い、自然の匂い。
    風景は全て臭いで描き出されます。
    その描写の細かくて生々しくて臭いこと!
    ドアノブから人々の胃袋まで、全ての匂いをまさに香り立つ文字にして
    これでもかと読者の鼻先につきつけます。
     
    そしてそんな匂いを自在に操るグルヌイユからも目が離せません。
    匂いにしか興味がなく、匂いが全ての男。前代未聞の人間です。
    そんな男の最後はどうなるのか。この結末は…すごい。
    本当に一読の価値ありです。
     
    この小説「香水」は2006年に映画が公開されました。
    映像にできない匂いというものをどう描くのか、
    とても興味があると同時に、この小説があまりに好きすぎて、
    私はまだ映画を観れないでいます。



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