もじりすた
3度のめしより本が好き
読み散らかした中から、おすすめ本を紹介します。
悪臭ふんぷんたるパリの街中で生きる、
ある一人の天才、いや悪魔のような男のお話です。
主人公はジャン=バティスト・グルヌイユ。
これといった自我も主張もない男ですが、ある1点だけが人と違う。
それは嗅覚。グルヌイユは匂いにしか興味がありません。
何を差し置いても、匂いが全て。
食べる事にも生きる事にも興味がありません。
そんな小説の舞台は18世紀パリ。
たくさんの人がひしめき、悪臭がたちこめ、食べ物が匂い、死体が臭う。
まさに香水文化発祥の地で、
グルヌイユも自然と香水に引き寄せられて行きます。
しかしグルヌイユが感心があるのは普通の香水ではありません。
それはある特別な人の匂い。
その人の匂いを一滴残らず写し取るにはどうすればいいのか、
匂いの常人ではないグルヌイユも悩みます。
まさにこの小説は、匂い、匂いのオンパレードです。
人の匂い、街の匂い、食べ物の匂い、自然の匂い。
風景は全て臭いで描き出されます。
その描写の細かくて生々しくて臭いこと!
ドアノブから人々の胃袋まで、全ての匂いをまさに香り立つ文字にして
これでもかと読者の鼻先につきつけます。
そしてそんな匂いを自在に操るグルヌイユからも目が離せません。
匂いにしか興味がなく、匂いが全ての男。前代未聞の人間です。
そんな男の最後はどうなるのか。この結末は…すごい。
本当に一読の価値ありです。
この小説「香水」は2006年に映画が公開されました。
映像にできない匂いというものをどう描くのか、
とても興味があると同時に、この小説があまりに好きすぎて、
私はまだ映画を観れないでいます。