おすすめ本 -書評-

  • 14.10.26
    こなごなに壊れて
    ジェイムズ・フレイ

  • ちょっとだけ、とページをめくったら一気読み。
     
    ストーリはこんな感じ。
    『主人公の「ぼく」は気が付いたら飛行機にいた。
    顔をひどくケガをしていて、どうしてこうなったのか、
    行き先がどこなのかすら分からない。
    でもこんなことは慣れっこで、というのも「ぼく」は
    長いこと、アルコール中毒でドラッグ中毒だからだ。』
     
    と、心身ともにぼろぼろの「ぼく」が家族の手で厚生施設に入って
    あれやこれやと成長して行く過程を書いた本でした。
     
    で。
    面白いか、面白くないか、と聞かれたら、「面白い」と答えます。
    ですが、なんかイマイチ食い足りない感じも否めません。
    いや、すごくよくできてるんですよ。
    読書の途中で我に返るほどの、小説としての破綻もありません。
    最後まで、乗り心地のいい車に乗ったように
    ぶんぶん飛ばしてゴールに連れて行ってくれるんです。
    でも…。
    踏み込みが甘い、と言えばいいのでしょうか。
    なんだか軽い感じがするのです。
    文体のせいかもしれません。
    つるつるっときれいな小説、という感じです。
     
    とくに後半、ゴール付近のつるつる感はハンパないです。
    みんないい人!ぼくもがんばった!人生うまく行く!
    まるでパステルカラーの紙吹雪が舞っているかのごとくです。
    普通に生きていたって、もっとぐちゃぐちゃな生き方なのに…と
    それまで面白かっただけに、ちょっと不満。
    巻末に、登場人物のその後が出ているのですが、
    そこだけが妙に生々しくて、溜飲が下がってよかった点です。
    ちなみにこの本、アメリカではベストセラー、
    しかも最初はノンフィクションとして認識されていたそうです。
    でも、しばらくて本当の話ではなく色々と話に誇張があると分かり、
    「ノンフィクションとか言って、嘘ついてたじゃん!」
    と物議を醸した本らしいのですが、
    私の感想としては「読めばフィクションってすぐ分かるだろ?」
    というものです。
     
    だって話がすっごく美しくまとまってるし、
    なにしろ登場人物みんなが主人公を応援してくれる。
    それってちょっとおかしいよね?主人公はアル中のジャンキーだよ?
    家族はもちろん、なぜかマフィアのワルまで
    もろ手を挙げて応援してくれる。
    そんなのありえねえだろうがよおおおー!
     
    と、文句いいましたが、とってもおもしろいです。
    夜の八時過ぎから読み始めて、
    途中で風呂に入りながらも読んで、
    深夜の一時に読み終わりました。
    こんなに集中して読んだ本は久しぶりです。
     
    やっぱり、読書っていいですね。



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