おすすめ本 -書評-

  • 14.11.01
    犯罪
    フェルディナント・フォン・シーラッハ

  • アマゾンでレビューがとってもよかったので読んでみたのですが、
    やっぱり自分で読んでみないと分からないですね。
    そんな当たり前のことを改めた実感した本です。
    いや、おもしろかったんですよ。たしかに。
     
    著者は刑事事件を扱う弁護士で、その経験を材料に、
    本書に全11編の短編を書いています。
     
    真面目な医者、戦争から命からがらドイツに逃げてきた移民、
    ハーケンクロイツを刺青した男、彫刻の事が頭から離れない警備員。
    現代ドイツという背景を背負った登場人物達は、
    色々な事情から犯罪を犯し、また巻き込まれていきます。
     
    話は全て犯罪をテーマにしてますが、重いものから軽いもの、
    視点を加害者においているもの、そうでないものと、
    様々なテイストがそろっているので、二つとして似た話はありません。
     
    そう、おもしろいんですよ。
    どうして犯罪を犯したのか、この事件はどう転がるのか、
    気になってページをめくる手が止められませんでした。
    しかし残念ながら、作者は芳醇な文章の書き手、というわけではなさそうです。
    (もしかしたら訳者で雰囲気が変わるのかもしれませんが)
    ですので、文章の奥行きや個性を味わいたいという、
    百戦錬磨の読書人には少々物足りなくなるかと思います。
    どちらかと言うとノンフィクション作家のような、実直で簡素な文の使い手です。
    パラグラフが短く、話を引っ張ることもしないので、
    時間の無い人、さっさと読みたい人、そしてミステリ大好き!
    という私のような人間にはお勧めです。
     
    特に「緑」の最後の会話。
    私は思わず二度見しました。
    こういう切れ味の良さ、大好きです。
    ごちそうさまでした。
     



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