もじりすた
3度のめしより本が好き
読み散らかした中から、おすすめ本を紹介します。
アメリカの科学者、なんていうと自由のシンボルのようですが、
差別をおそれてファミリーネームを変え、
妻となる女性は夫と同じ大学にいられないので辞める。
そんな時代に生きた科学者の伝記です。
本の表紙から分かりますように、
ハリーは布と針金で母親を作り、サルを使って実験を行います。
とはいえ、実験に興味のある人だけでなく、
子育てやサル、そしてもちろん人間という生き物に
興味のある人にも強くオススメできる本だと思います。
ハリーが実験を行った当時、アメリカでは
育児に『愛』は必要ないと思われていました。
無菌室で行う、今で言う非人間的な育児が最高。
『愛』なんていう非科学的なものを
論じるなんて言語道断、という風潮でした。
しかし風雲児ハリーはそこに風穴をあけます。
もちろん科学界に認められるような正攻法の実験手法を用い、
サルという動物で人間を解き明かしていくのです。
というふうに説明すると、この本は実験結果だけに
的をしぼった本のようですが、そうではありません。
著者みずから、生前のハリーと親交のあった友人たちに
インタビューを重ねて書いていますので、
ハリーがどのような人間だったのか、
かなりの分量をさいていて、その人間くささが
とてもいい味を出しています。
代理母の実験をしておきながら、実験にのめりこみすぎて
家庭を壊したり、そのくせやっぱり一人ではいられなかったり。
科学者とはいえ、ただの人間がここにいます。
もちろん、実験についてもかなり詳しく書かれています。
サルを一匹だけ隔離して、社会性を切り離す実験を行うのですが、
これがまぁ……サルが鬱になります。
そしてハリーのすごいところは、これを治す実験も行うところです。
一体どうやって治療していくのか。
気になる方はぜひ読んでみてくださいませ。