おすすめ本 -書評-

  • 14.11.04
    愛を科学で測った男
    デボラ ブラム

  • アメリカの科学者、なんていうと自由のシンボルのようですが、
    差別をおそれてファミリーネームを変え、
    妻となる女性は夫と同じ大学にいられないので辞める。
    そんな時代に生きた科学者の伝記です。
     
    本の表紙から分かりますように、
    ハリーは布と針金で母親を作り、サルを使って実験を行います。
    とはいえ、実験に興味のある人だけでなく、
    子育てやサル、そしてもちろん人間という生き物に
    興味のある人にも強くオススメできる本だと思います。
     
    ハリーが実験を行った当時、アメリカでは
    育児に『愛』は必要ないと思われていました。
    無菌室で行う、今で言う非人間的な育児が最高。
    『愛』なんていう非科学的なものを
    論じるなんて言語道断、という風潮でした。
    しかし風雲児ハリーはそこに風穴をあけます。
    もちろん科学界に認められるような正攻法の実験手法を用い、
    サルという動物で人間を解き明かしていくのです。
     
    というふうに説明すると、この本は実験結果だけに
    的をしぼった本のようですが、そうではありません。
    著者みずから、生前のハリーと親交のあった友人たちに
    インタビューを重ねて書いていますので、
    ハリーがどのような人間だったのか、
    かなりの分量をさいていて、その人間くささが
    とてもいい味を出しています。
    代理母の実験をしておきながら、実験にのめりこみすぎて
    家庭を壊したり、そのくせやっぱり一人ではいられなかったり。
    科学者とはいえ、ただの人間がここにいます。
     
    もちろん、実験についてもかなり詳しく書かれています。
    サルを一匹だけ隔離して、社会性を切り離す実験を行うのですが、
    これがまぁ……サルが鬱になります。
    そしてハリーのすごいところは、これを治す実験も行うところです。
    一体どうやって治療していくのか。
    気になる方はぜひ読んでみてくださいませ。
     



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