おすすめ本 -書評-

  • 14.12.07
    買い物する脳
    マーティン・リンストローム

  • お買い物、好きですか?
    私は好きです、といいたい所ですが、モノによりますね。
    好きなモノを買うなら、それこそにやにやしながら財布を出しますし、
    かといって必要なものがなければ、
    やどかりのごとく家にひっこんでます。
    作者はそんな人間に一つでも多くの買い物をさせようとする、
    マーケティングの専門家の本です。
     
    この本はビジネス書にカテゴリされる本ですが、
    ただの読み物としても十分楽しめる本です。
    たとえば、スーパーにワインを買いに行ったときに、
    店内にフランス音楽が流れているとほとんどの消費者は
    フランスワインを選び、ドイツ音楽が流れていると
    なんとドイツワインを選ぶという事実があるそうです。
     
    驚くのはこれだけじゃありません。
    実際にワインを買った人にアンケートを取ってみたところ、
    店内にかかっていた音楽に気がついた人はほとんどいない。
    情報操作と言えば大げさですが、
    まあようするにそういうことですよね。
    消費者は、企業が売りたい商品を知らないうちに
    買わされる、ということです。
    そしてこのようなマーケティングの例はこれだけでなく、
    なるほど、と膝を打つような仕掛けがたくさん書いてありました。
      
    さらに。
    たとえば、ペンと紙で書くアンケート、ありますよね?
    新番組を被験者に見せて、どう思ったのかアンケートを取ります。
    すると多くの人が「この番組は好きじゃない」と答えます。
    しかし、脳を調べてみると、その新番組を見ている時、
    被験者はなんと大好きだと答えた番組を見ているときと
    同じ場所が活性化しているという結果が出たのです。
    アンケートは時にうそをつく。
    だから今後、企業はアンケートだけでなく
    もっと踏み込んだ手法を使うべきだろうということです。
     
    …ちょっと、怖いですよね。
    そして作者もそれを分かっているので最後に書いています。
    この本を読んで、企業が仕掛けたトリックを見破り、
    理性を取り戻してほしいと。
    でも、たぶん会社の方が一枚上手ですよね。
    私たち消費者は知らないうちに「仕掛け」にのせられ、
    その商品を手に取るようになる気がしてなりません。
     
    でもそれが完全に悪いことかというと、
    今の世の中、洞窟に住んで狩りをしているわけではないので
    消費をしないという選択肢はまずありえない。
    ということで、消費者も企業に劣らず新しい知識を学びながら、
    上手に買い物を楽しむのがいいんでしょうね。
     
    と書いておきながら、やっぱりなんか釈然としない。
    そんな消費社会に得体の知れない疑問を持たせる、
    とてもいい本でした。



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