おすすめ本 -書評-

  • 15.05.24
    きのう何食べた?
    よしながふみ

  • 弁護士の筧と美容師の矢吹の二人が暮らす日々を、
    食事を主軸として描いた漫画です。
     
    ちなみに筧と矢吹は両方とも男性でゲイのカップルです。
    ですので最初はその設定がストーリーを底上げするための仕掛けに見えて、
    なかなか食指が動かなかったのですが、読んで反省。本当におもしろい。
    そして美味しそう。
     
    二人が暮らす中で、さまざまな出来事が起こり、過ぎて行く。
    それをユーモアたっぷりに、時にはじんとさせながら、
    料理が大の趣味である、筧が毎日作る料理とからまりながら話が流れていきます。
    一話で完結する話がほとんどで、その中心にはかならず何かの料理があります。
    いちごジャム、トマトとツナのぶっかけそうめん、栗ごはん、などなど。
    作中では筧自身が順を追ってきちんと料理をするので、レシピとしても読めるほどです。
    しかしこの料理にうまく話がからむことからむこと。
    美味しそうな料理を思い出すと同時に、ああこんな話だったな〜とくすくす
    思い出し笑いが出てしまうほどです。
     
    そして料理はもちろんですが、出てくる人達がみんな面白い。
    「いるいるこういうタイプ」と思わせるような親近感を抱くタイプでもあり、
    そのくせ漫画ならではの「こういう人がいたらいいのに or 大変!」
    という夢も合わせ持っている、ものすごくいい塩梅の登場人物の目白押しです。
     
    特に私が好きなのは、筧が唯一親密にメールを交わす女性、佳代子さんです。
    筧の料理仲間でもあり、とてもいい距離感で話をきいてくれる友達でもあります。
    筧が家族について悩んでいる時に相談すると、いつも小気味のいいセリフがかえってきます。
    そうだよ佳代子さん、その通りだよ!と思わず本を持つ手に力が入ります。
     
    色々あっても美味しい物が食べられるってとても幸せ。
    そんな作者の気持ちがストレートにこもっている、
    読んでいるこちらももちろん幸せになれる本でした。



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