おすすめ本 -書評-

  • 15.10.02
    ひきだしにテラリウム
    九井諒子

  • 天才だ。
    読んで思わずそう思った漫画です。
     
    「ひきだしにテラリウム」は短編漫画集で、
    全33話が入っています。
    全て独立した、各々にベクトルの異なる話ですので、
    (最初と最後の話だけ、いい感じにリンクしていますが)
    もし例えちらっと読んだ話が好きではなくとも
    ぜひ他の話にも目を通してみて下さい。
    そうか、この人のひきだしはこんなに多いのか、と
    感心すること請け合いです。
     
    そして私は本当に素敵だと思うところは、
    これだけ短編を書いて、話毎に絵柄もがらっと変えて、
    話の進め方もオチもバックボーンもいろんなジャンルで
    これでもかと勝負しているにも関わらず、
    全話を通して読み終えた時には、全てに作者らしい匂いを感じて
    とても幸せな読了感を得られるということです。
    表現の向こう側にある作者の人間性といいますか、軸といいますか、
    それが決してぶれていない。それが非常に心地いいのです。
     
    なんてえらそうに解説ぶったことを書きましたが、
    なにはともあれ最高に素敵な漫画です。
    どちらかというと、SF好きな方にはたまらないかもしれません。
    日常と非日常をうまく織り交ぜ、最大限に引き出して表現している、
    そんな話が多いでしょうか。
    そしてこの「ひきだしにテラリウム」の前にも
    「竜のかわいい七つの子」という短編集があるのですが、
    こちらも激しくおすすめです。
     
    本書で私が特に好きな話は「恋人カタログ」と「夢のある話」です。
    両方とも、人の書き方がとても素敵で何度読んでもにやにやします。
    一人でも多くの人に読んでもらいたいものです。



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