もじりすた
3度のめしより本が好き
読み散らかした中から、おすすめ本を紹介します。
ああ…いい本を読んでしまった…。
インド系の人たちを主軸とした、短編9編の入った本です。
アメリカに移民したり、インドにいたり、それをアメリカ人の視点からみたり。
私にとって、「こんな本、初めて見た…」でした。
インドを舞台にした小説は少なく(探せばあるのでしょうが)、
さらにインド系の人たちに焦点を当てた小説など見たこともなく、
少なくとも私はこれまで読んだことがありませんでした。
失礼なことに、「もしかしてマサラムービー的なお気楽極楽小説?」
なーんて思って手に取ったので、反省することしきりでした。
「ごめん!すごいじゃん、これ!」と。
特に中の一遍、「ピルザダさんが食事に来たころ」で、
主人公であるわたしが、故郷を想うピルザダさんを心配してお菓子を毎日一つずつ、
お祈りをしながら食べるところで心の琴線がかきならされました。
私にも覚えがあります。
小さいころ、自分だけのおまじないがあったんです。
それを遠い海の向こうで文化も環境も違うラヒリという人が
同じ気持ちで書いたのかと思うと、
なんだか胸がきゅーんとしてしまったのです。
それは「共感」、という言葉にすると分かりやすいのかもしれません。
他にもこの本で共感したシチュエーション、フレーズはたくさんあります。
それこそ日本の小説よりも、たくさんあって驚いたほどです。
でもそれだけじゃないのです。
たしかに共感して身近に感じたのも事実ですが、
この人の文章はさらにそれを突き放す冷静さがあって、
それがさらに私の胸をきゅきゅきゅーんとさせてくれました。
読み終わった後に色々考えてしまう本で、
まさに表紙の写真そのもの、いろんなスパイスが入れられています。
味わい深い、美味しい一冊でした。
そして。
この「新潮社クレスト・ブックス」のシリーズは装丁が美しくていいですね。
さらにくやしいことに(?)、外見だけでなく、中身もいい本が多い。
気がつくと手に取ってしまう、魔性の本です。