おすすめ本 -書評-

  • 10.03.01
    人はなぜ「美しい」がわかるのか
    橋本治



  • 久しぶりに新書を読みました。
    橋本治:人はなぜ「美しい」がわかるのか




    別にこれは脳科学の本ではないので、
    「美しさ」を感じる具体的なプロセスの検証をしているわけではありません。
    著者の主観や経験から言える「美しさ」を感じる現象について、
    色んな掘り下げ方をしている本、という感じです。


    その中で、こんな一節がありました。
    「孤独と敗北と”美しい”は妙な関連性を持っていて―」
    この前後に詳しい説明があるのですが、
    読んだとたんにこの本にちゅーをしたくなりました。
    「わかる!そうだよね!あたしもそう思ったんだよ!」


    というのもですね、以前銀座へ自転車通勤をしていた時、
    毎晩東京タワーとたくさんの橋の夜景を見ながら帰っていたのです。
    それがいつもひどくきれいで、そのくせとても悲しくて、
    どうしてこんな気持ちになるんだろう?と不思議でしょうがなかったのです。
    こんなにきれいなものを見たのに、どうして悲しくなるんだろう?と。


    そこで私なりに考えたのが、「夜景」というものは何があっても
    手に入れることができないから?と思ったのです。
    だからどんなにキレイだからと切望しても、一生手に入れることはできない。
    宝石箱の中にいれたりすることができません。
    ましてやお金で買えるものでもないし、朝になったら消えてしまう。
    絶対に自分の手中に収めることのできない、
    手の届かない存在を欲しがっているからかな、と思ったのです。
    それと同時に「こんなことを考える自分はおかしいのう」とも。
    「理屈なんてこねくりまわさずに、素直にきれいって言えばいいじゃーん」


    そんなことを考えてから数年。
    この本を読んでなんだか気持ちが軽くなりました。
    ああ。やっぱり「美しい」を感じて、理由を考えてる人がいるんだ。
    よかった。



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